01. SUSPIRIA サスペリアのテーマ (Marangolo-Morante-Pignatelli-Simonetti) 5:57
歌詞カードに起こされても困るような不気味なスクリプトは、シモネッティのパフォーマンスによるウィスパリング。シモネッティの談話によれば、1500〜1600年代のラテン歌詞付きの旋律をモチーフにしたと云う楽曲だが、そのモチーフとなったアイディアを寄稿したのは、アイリーン・マラテスタと云うチネヴォックスのプロモーションに携わっていた事もあるギリシャ人女性。アルジェントが中世の魔術的なエッセンスの漂う古代の音楽をリサーチしている事を聞きつけたアイリーンは、その「木の上の3人の魔女」"Le tre streghe sull'albero" ("Three witches
on a tree")と題されたラテン歌詞付きの旋律をプロダクションに冗談半分で送り付けるが、一方のアルジェントはフィルムのコンセプトにもリンクすると深く感銘、太鼓判が押された事でゴブリンの面々にGOサインが出されたものだった。
チェレスタの1度(8va)/5度/1度の分散を除けば、DEFA/GFG休/FGAD/D♭D♭D休(4/4で4小節分)と云うベル音のトップだけになるテーマのリフだが、恐らくは「木の上の3人の魔女」と云うモチーフもそんな童謡のような単旋律のリフに乗せて歌われていた素材だったのかも。そんな親しみやすいイージーなリフとお化け屋敷のようなワクワク緊張感が融合すれば爆発的な知名度を得たのも然るべきと云った所だが、そんな中でもなかんずくでの個性を演出していたのは、ギリシャの弦楽器ブズキやインドの打楽器タブラなどのマイナーな楽器。民俗音楽でプレイされるブズキやタブラのサウンドなどは、それぞれフツーに聞き流せばどこまでもフツーの楽器だが、ワールドワイドなサントラ音楽にひょっこり登場するブズキの場合「判別不能な楽器=謎のサウンド」と云う直感的なイメージに連結、一方のタブラの方は不気味な残響処理が功を奏する形で異彩を放っていた。
個人的にもこのテーマ曲には絶句させられたが、その理由と云うのも序盤と終盤のテーマのリフなどではなく、ダイナミックな中間部があまりにカッコ良すぎたため。ソリッドな2拍3連が炸裂する中間部のダイナミズムには手放しで卒倒させられた。しかもこのパート、Dmでの一発勝負。マイナートライアドのワンコードながらも、アタックの鈍いメロトロンによるチャーチなサウンドも大きな魅力。フィルムではエンドクレジットの炎上シーンで挿入されていたが、終わり良ければ全て良しと云う事で映画の方に惚れ込んでしまったのもそんな理由を経ていたから。この「サスペリア」は中学生の時に観た作品だったが、あの劇場でのエンドクレジットの衝撃は今なおもフリーズされたままだったりする。 |
02. WITCH 魔女 (Marangolo-Morante-Pignatelli-Simonetti) 3:10
ティンパニの残響処理、オバチャン的な生ヴォイスとメロトロンのクワイヤ、フランジャーがかった低音レンジでのユニゾンなど、過去のホラー系サントラでもここまでヴィヴィッドなインパクトと云うのも記憶にない所。リフのユニゾンを奏でるベルツリーなども実に効果的。隣近所に聞こえる音量で鳴らすには抵抗を覚える曲だが、これって実は、ステージで再現してみてもインパクトがあるスコアなのかも。シェークスピアのイメージにもリンクするんだけど。 |
03. OPENING TO THE SIGHS 謎の呻き声 (Marangolo-Morante-Pignatelli-Simonetti) 0:32
フィルムの冒頭でもお馴染みのトラック。神経を逆撫でされるようなフェイド効果が絶品。 |
04. SIGHS 悪魔達の囁き (Marangolo-Morante-Pignatelli-Simonetti) 5:15
ルナティックなブズキのサウンドを背景にアコギがグルーヴする異色のナンバー。地を這うようなスーパーバリトンの呻き声からアルトまでの多様なクワイヤも立役者の曲だが、そんなクワイヤ系のパートを取り去ってしまえば、恐らくは「カッコイイ」と云うイメージのナンバー。俄然盛り上がるクライマックスは、稀代の悪魔系ホラーたるフィルムのプロットを集約。重厚なメロトロンと複数の生ウィスパーで構築されるポリフォニックな空間は圧巻。公開当時、学園祭などでの怖がらせ系イベントでも重用されたのが2曲目とこの曲だった。 |
05. MARKOS エレナ・マルコス (Marangolo-Morante-Pignatelli-Simonetti) 4:03
システム55のシークエンスフレーズ、フランジャー+ディストーション系のリッケンバッカー、ロガン社の鍵盤ストリングス(メロトロンかも)、切れ味鋭いパーカッションのコンビネーションで構成されるナンバー。特筆すべき点は、ストリング系以外の鍵盤フレーズは、ウィットの効いたクライマックスまで全てがプログラムだったと云う辺り。
それにしても笑えるのが、フィリップ・グラスのアルバム「2つのページ」の収録曲「同じ動きの音楽 "Music In Similar Motion"」と「エレナ・マルコス」の類似性が真しやかに囁かれている事。IMDbの「サスペリア」紹介ページなどでも音楽の項目で堂々と名を連ねるフィリップ・グラスだが、これって実はお門違いも甚だしい。一言で云えば、「エレナ・マルコス」はCm7一発のジャムナンバー。完全4度でのハモリは常に付きまとうものの、基本的な分散フレーズは、16分割で4小節にすれば「CE-CE-/CE-CE-/CE-FG/FGFE-」と「FE-CE-/FE-CE-/FGB-C/B-CB-G」("-"はフラットの意)と云う2つだけ。そんな虎の子の分散フレーズを背景に、ピニャテッリのリッケンバッカーがテンションもせいぜい9th程度でジャムると云うナンバーが「エレナ・マルコス」の正体。となれば、一つのモチーフをテーマにさり気ないヴァリエーションを真骨頂にする「同じ動きの音楽」とはコンセプト以下何から何までもが全く別。と云うか、Cm7一発で4/4に終始する伴奏トラックをシンセのアルペジオにしただけで「真似してる!」と云われたような暁には、音楽の世界も当の昔に破滅していたはず。アカデミックなコンセプトを実践したフィリップ・グラスが実際にゴブリンを訴えたとは到底思えないもので、この話題についてフィリップ・グラス本人やゴブリンの面々がどう関わっていたのかなども個人的には全く興味なし。何故ならば、これってホントに稚拙なケースなので。と云うか、トーシロを相手に法廷などでその違いを証明するのも、ミニ鍵盤でも1台あれば余裕でOKってなケース。Cm7の分散ノートを全音符タイのウンコ弾きにでもしていれば、どこが似てるの?とか云われるケースなんですよ。一方の「同じ動きの音楽」は、ウンコ弾きに出来るような楽曲じゃないでしょって。個人的にはフィリップ・グラスもゴブリンも大のお気に入り。だから余計アホらしく思える。 |
06. BLACK FOREST 暗黒の森 (Marangolo-Morante-Pignatelli-Simonetti) 6:00
メロウな序盤からヒートアップする中盤を経てメロウな序盤のモチーフに帰ると云う展開は、リリースの数年前、全世界を席捲したハンコックの「ヘッドハンターズ」収録曲「スライ」にもソックリ。ただ、8分の3連打をキッカケにするピニャテッリのベースラインも異様にカッコイイ中間部は、モランテのソロにも象徴されるようにロック魂が全開。アゴスティーノの兄アントニオもテナーソロで客演。モランテ/シモネッティ/アントニオのソロの交換は、8小節1コーラスで2コーラスずつ。ムーグを中心とする鍵盤系のリヴァーブサウンドは、あのバレエ学校を取り巻く夜の森のイメージにもぴったりだが、フィルムでは使われず。と云うか、夜の森が登場する場面も序盤だけだけど。16分割り3連カウントシンコペからGmとFでスライドするキメは、次の「闇の饗宴」の調性にもリンク。 |
07. BLIND CONCERT 闇の饗宴 (Marangolo-Morante-Pignatelli-Simonetti) 6:11
イントロのテーマリフはご愛嬌。と云うより、マルコスの手下キャラが密談するような情景をイメージした曲だったのかも。劇場公開当時、ウド・キアーとジェシカ・ハーパーの会談シーンで使用されていたような記憶もあったが、後年のメディアによれば勘違いだったと云う事で。と云うか、もう個人的にはこの曲が「ゴブリン」そのものだったので、劇場鑑賞の際にも幻聴が聞こえてたのかも。アナログ2枚買い継ぎしたのもこの曲の部分が磨り減っていたため。曲の内容と云えば、これまたハンコックのカメレオンのような一発モチーフ(Gm)のジャムナンバー。でもこの曲にはかなりやられました。モランテやシモネッティのソロも楽しめロイクーなフィーリングも満開の中間部はもとより、相変わらずの切れ味を披露するマランゴーロのタイコが何より絶品。このインスト、個人的には、最も好きなゴブリン曲です。 |
08. DEATH VALZER 死のワルツ (Marangolo-Morante-Pignatelli-Simonetti) 1:51
どう考えても4人の共同作品とは思えないシモネッティのアコピソロ。ハ長調からヘ長調には移調する器量はあるものの、どこを切ってもフツーの3/4。でもそのタイトルは「死」のワルツ。盲目のピアニストも惨殺される映画を見た方であれば、フツーに納得出来るタイトルなのかもしれないが、音だけを聴いたような方は「死のワルツ」を「詩のワルツ」とでも勘違いするのではなかろうか。然程の難易度ではないが、ELP「タルカス」のイラプション両手弾きなどを引き合いに出されても、個人的にはこちらの方が全然イヤ。全編オクターブでストライドもデカイしテンポもフツーに速い。しかも、無機質な曲想にも拘らず悠長なプレイを要求されるタイプの楽曲。オクターヴのシェイプなんかには持って来いなんだけど。ましてや、ゴブリンの楽曲なので高いモチベーションで弾ける訳なので。このサントラのヴァージョンは、映画では一発目のバレエシークエンスで登場。主役のスージーが昏倒する2度目のシークエンスでは、サントラ未収録のヴァリエーションが登場、そちらの方もハ長調のワルツでしたね。 |
09. SUSPIRIA サスペリア(チェレスタとベル) 1:34
ここから以下はボーナストラック。サブタイトルの通り、1度(8va)/5度/1度の分散を奏でるチェレスタと、DEFA/GFG休/FGAD/D♭D♭D休(4/4で4小節分)をトップで奏でるベルだけをトラックダウンしたヴァージョン。 |
10. SUSPIRIA サスペリア(ナレーション) 1:48
元はギリシャ語だったはずのモチーフの歌詞だが、これは英訳されていて聞きやすい。と云うか、何を云ってるのかも分からなかった原曲が結果オーライだったと捉えれば、これは完全ネタバレってとこなのかも。 |
11. SUSPIRIA サスペリア(イントロ) (Marangolo-Morante-Pignatelli-Simonetti) 0:32
これぞ正しく感涙のボーナス。怒涛のメロトロンと木管をフィーチャーした硬派なバンドアンサンブル。モランテ抜きなのがやや残念だけど。劇中では未使用の1曲。 |
12. MARKOS エレナ・マルコス(オルタネート・ヴァージョン) 4:10
定石の通り左寄りにパンされていた公式テイクのピニャテッリが、いきなりセンターで登場。ストリング系の絡みも多い序盤だが、何より一貫したシークエンスに終始する展開はドラマティックな公式テイクとは全然違う。6連のタムをかすかにフィーチャしたエンディングはマランゴーロのファンには嬉しい所。 |